中国古典建築である四合院について画像を使って解説します,to explain the Siheyuan of Chinese classic architecture by many pictures,以多张图像来解说中国古代建筑之四合院


    上記画像は、中国伝統建築の「四合院」に、現代文化と生活スタイルを融合させた豪邸です。なんと言う美しさでしょう。

    平均にして200㎡くらいあれば出来るらしいですよ。日本では田舎じゃないと、こんな纏まった土地は手に入りません。さすが大陸です。

    「四合院」とは家の事?豪邸を言うの?と、最初はこう言う疑問が湧きます。ここで、「四合院」とは何かを、画像を引用しながら、説明して行きます。最後まで読めば、他の人より物知りになりますよ。

「四合院」とは?

    中国の東北地域では、環境や地理的な条件の影響もあり、古くから一族が同じ場所に住み、それぞれ独立した住居で中庭を囲んだコミュニティーを持ち、家族が側にいて互いに助け合う、これが伝統的な生活スタイルで、この生活を守ってくれるのが「四合院」でした。

    「四合院」とは、古より中国大陸において、漢民族による、四方向にそれぞれ独立した住宅で、中庭を囲む特徴ある伝統的な住宅建築のスタイルを言います。因みに考古学の研究で、「四合院」は既に3000年以上の歴史があると判っています。

    現代、子供が成人し、学業を終えると、アパートマンションを探して、家を出ると言うのは、市場経済に踊らされるだけで、核家族とは、学問的に「消費型家族」と言います。

    中国でも核家族化が進み、大きい「四合院」はそれぞれ別の家族が分散して借りるアパートのような集合住宅となり、「大雑院」と言う別称があり、更には都市計画によって一時消えそうになりました。

    市場経済で富裕層となった人々から、自国歴史や文化への思いと共に、現代文化と融合させた新しいスタイルの四合院を、継承しています。もう少し現代版四合院のデザイン画を堪能したいと思いませんか。ほら。

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    建築歴史の一部として「四合院」をもっと詳しく調べて行きましょう。

「四合院」の基本構造

    明清時代の、最も一般的な三進四合院の構造図があります。裕福な家庭は広くゆったりした配置であるのに対し、一般平民はギューギュー詰めの配置でしたが、それでも、古代中国の身分制度や生活様式、更には風水等、最も理にかなっている構造とされていたので、条件がある人はこのような「四合院」に住んでいました。

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    上記構造は、明清時代の四合院の標準テンプレートの一つ、三進四合院です。「四合院」の構造は、貧富の差や規模の大きさによって、様式が一進~五進があります。住宅のみに限らず、役所なども、規模が個人宅より大きい四合院の中にありました。

    東南方向にある正門を開け、真っ先に視界へ飛び込んでくるのは目隠し壁、左へ曲がると前庭に入り、中庭に入る為の目隠し門があります。目隠し門を開ければ、そこはめくりめくる・・・・・・すみません、普通の大家族の生活空間がありました。

    後日、この四合院の構造を更に深堀して行きたいと思いますので、ここでは標準的な例だけを説明して行きます。上記構造図には英語表記もあるので、一通り見ると、大体な事はわかると思います。

    P.S. 「四合院」の構造を更に詳しく解説する記事が出来ました。
【チャイニーズトラディショナル】古典的建築「四合院」の構造を深堀り

「三進四合院」の部屋と空間の役割

    「四合院」は、至る所に風水八卦に従っており、前門には守護神の彫刻「門墩」があり、正門は真ん中ではなく、南方向の東寄りに位置しています。この四合院に纏わる風水について、別途特集記事を作成しておりますので、マイホームを計画中なら、参考になれると思います。


    では、四合院の正門から入りながら説明して行きましょう。

Gate(正門)
    四合院にある、唯一外界への正式な出入り口で、数人が集まれるスペースがあり、現代住宅に置き換えると、所謂玄関ポーチです。以下に引用する画像は、ある一つの四合院ではなく、中国各地の四合院画像を、説明するイメージが分かり易いよう、集めたものです。


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Back Room(南棟)
    「四合院」の正門に連なる棟で、中国語を「倒座房」と言います。風水的に北玄関は最も下位住宅とされ、四合院では唯一構造上、どうしても北に向けてドアを作る部屋なので、方向的に逆と言う意味で呼ばれるようになった「倒座房」、高くすると四合院全体の陽当たりに影響を及ぼすので、普通は1階の高さにします。

    年中陽が当たらず、しかしセキュリティーの視点から必要な棟なので、廊下に繋がるオープンスペース、一時客用部屋、書生、召使の部屋等を置くのに使います。

    商売で店舗などを構える場合は、このバックルームを店舗として扱い、南を開けるのでバックルームではなくなりますが、四合院全体のセイキュリティーは別途補強する必要が出て来ます。

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Front yard(前庭)
    正門と目隠し門の間にある庭スペースの事です。上記画像では、石彫刻のテーブルセットがあるスペースです。南棟の住人が多く使うスペースですが、西にはトイレがあり、ペットなども置くので、四合院全体から考えると、現代日本住宅の土間的な役割をしています。

Screen gate(目隠し門と壁)

    四合院の目隠し門は、中央に作ってもいいとされ、基本的にプライバシー保護の為のものであり、容易く他人に中庭から住宅内の状況を覘かれない為に作られます。その為、正門よりは低く、目隠し壁は少々薄くなるのが普通です。

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    これが、四合院の正門を開けて、すぐ目の前にある独立型の目隠し壁です。東棟の側壁と一体化するもの、幅の広い絵画を施すもの、デザインの種類は豊富にあります。



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    訪問者が四合院の正門から入って、一番最初目に入る壁なので、主人の面子と威厳を示し、所有する四合院の印象を残こせる壁にしたい、と当時は思ったのでしょうか。一旦作るとなれば、芸術性の高い物を作るのが、昔の中国人のすごさですね。

    目隠しの役割があるので、壁に窓はありませんが、前庭の様子を伺う覗き穴を作る場合があります。四合院の中門であり、現在では歴史的、芸術的価値が高いものとして、注目されています。

    因みに「四合院」の中庭に向いている住宅棟の内壁には全て採光用の窓がありますが、外との仕切りになる外壁は、窓が一切ありません。但し、外の様子を伺える小さな覗き穴は作ってあります。

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Corride(外廊下)
    中庭を横断せずとも各住宅棟へ通じる為の外廊下です。四合院の住宅棟の前にぐるっと1周して、屋根付きで雨風を避けられます。

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Side-room(側棟)
    各住宅棟は規模の大きさによって、3、5、7部屋あり、その両側に一回り低い屋根の別室があります。高い屋根に対して低い屋根が顔の横にある耳のように見える事から、「耳房」と言う名前があります。四合院の側棟は世帯主の子孫に与えられる部屋です。

    風水序列では、東が西より上になるので、四合院のEast side-room(東棟)は男子の部屋で、親離れする時期から成婚後も使い続け、West side-room(西棟)は女子の部屋です。

    子だくさんの場合は、東棟に長男、西棟に次男、娘は全員バックヤードを挟んだ北棟に住みます。北棟は四合院の中で最もプライバシーが守られる場所です。

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Corner-room(別室)
    先ほど説明した「耳房」のことです。母屋に住む主人の専用書斎や着替え、趣味の部屋兼物置の部屋になります。四合院の側棟にもそれぞれ別室があり、物置や書斎に使えます。

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Main room(母屋)
    四合院の正堂で、一族の主が住みます。部屋は3つと別室2つで合計5部屋あり、規模によっては合計7~9部屋のものもあります。四合院の住宅棟の部屋はほぼ中央3部屋が繋がっていて、中央がリビングで、左右の部屋は寝室になります。寝室からリビングには出られますが、直接中庭に出る事は出来ません。封建社会の時代は一夫多妻制が日常的にまかり通っていたので、両側の部屋や別室は状況に応じて、妾に住まわせる事もあります。

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Court yard(中庭)
    四合院の中庭は、植物栽培や菜園、金魚鉢置き場、採光、通風、納涼、憩い、家事労働、通行、正にマルチスペースとなります。中庭に誰かが家事や憩いをしている場合は、外廊下を使って通行います。

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Back yard(裏庭と北棟)
    三進四合院のレベルからバックヤードが作られます。裏庭を挟んだ北棟はもっともプライバシーが守られているところであり、世帯主の母親や妾など家族の中の女性達の部屋が並んでいます。たまにあるケースとして、抱える妾や女中さんの部屋にする事もあります。

    母屋と北棟の間にある裏庭は、中庭の様な多機能なものではなく、主に北棟住人の日向ぼっこと憩いの場です。

「四合院」と西洋建築の動線比較

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    上記画像は中国人が西洋式住宅と中国の四合院の動線を研究した略図です。生活の色々な視点から見比べて見たいと思います。

目的達成 ⇒
    例えば買い物に出かける、レジャーに出かける、仕事に出かける、西洋式は目的別に方向を選択して動けるので、非常に合理的です。対して、中国式四合院は規則良く配置し、目的達成には秩序に従う行動になります。出入口は1つであり、正門は居室からかなり距離があり、常に1つの事で庭を歩き回る事になります。

    これを非効率でタイムロスと言うか、はたまた健康の為に鍛えると言うか、各々思考原点が違いますので、分かれるところですね。

コミュニケーション ⇒
    西洋式は自宅を中心としています。植栽で囲ったりしますが、殆どオープンな状態ですので、常に外の視線に晒されています。西洋人は開けた性格で対外的なコミュニケーションに長けていますが、生活に慣れていても外的影響とストレスは無意識に蓄積され易いです。

    中国の四合院スタイルは周辺に高い壁でプライバシーを守り、真ん中で採光するので、完全リラックスモードへのオンオフができます。但し、コミュニケーションは内側に向けての閉じられたもので、往々にして価値観は家長に左右されます。

    また、最も西洋人に嫌われる傾向にあるのは、内側に向けての話と、外面が違うところでしょう。西洋人は人の長所と短所を含めて包容的な付き合いを好み、中国人は自分たちが恥だと決めている事は、他人が別に恥だと思っていなくても、とことん隠そうとします。隠す事で余計な事になったり、思わず悪い方向へ向かったりします。

日常生活の習俗 ⇒
    住宅構造と大きく関係していますが、意外と意識されていません。例えば西洋式の住宅は常にオープンであり、隣人同士が互いに視線があるおかげで、周辺環境は互いに協力して良くしょうとする動きがあります。

    中国の四合院のような囲い込むスタイルは、内側では楽しい空間を共有できますが、逆に壁の外に対しては、序列的上に従っても、それ以外は「関係がない」と無意識に思い込む傾向があります。中庭コミュニティーが分かり易い分だけ、広い外社会のコミュニティーが捉えにくいのです。

セキュリティー ⇒
    間違いなく四合院のセキュリティー性は非常に高いものです。住宅の外壁と囲い壁はレンガで数十センチの幅で積み上げ、多少の暴動が起こってもびくともしません。窓は全て内側に向けていて、外壁には覗き穴しかありません。窓から侵入するのは、あまり想像できません。

    対して、西洋の住宅はどこへでも気軽に出かけられる代わりに、どこからでも気軽に侵入できます。セキュリティーシステムを構築したとしても、静寂の夜には簡単に窓から侵入ができます。いつも映画やドラマのネタとして見ますね。お金持ちは鉄の柵や壁を構築して囲みますが、住宅の外側を囲むので、費用的合理性はあまりありません。勿論お金持ちは気にしないでしょう。

    結局どちらも一長一短、安全な家庭環境で安らかに生活を送り、子孫代々繁栄を望むのは、多くの人が持っているごく普通の願いです。社会全体の平和を望むオープンな住宅様式でも、残念な事に予測できない事故や事件は結構な割合で存在します。一族だけの小さな平和を望む四合院のような住宅様式でも、社会全体が不安定なら意味がありません。中国の文化大革命で、このような四合院の住人は革命され、住宅を勝手に奪って貧困層に分け与えていました。

    どの建築様式でも、長所を取り入れ、短所を補う、取捨選択した新しい生活様式であれば、人はより理解し合う事ができるでしょうか。