中国古典的建築の象徴である四合院,Siheyuan is a symbol of Chinese classical architecture,四合院是中国古代建筑的象征


    シノワズリからチャイニーズトラディショナルまで、中国古典的インテリアの美を追いかけると、何度か「四合院」と言う古典建築スタイルに辿り着き、この際、とことん調べる事にしました。

    「四合院」の「四」は東西南北を指し、「合」は四方を囲むと言う意味で、「院」とは高壁などで囲まれた生活スペース、つまり中庭と言う意味です。東西南北にそれぞれ独立した住居で中庭を囲むと言う建築スタイルで、中国伝統的な建築として知られています。「伝統」と言う響き、酔わせますw

「四合院」の歴史と由来

    中国最古の「院」と言われる夏朝の宮殿遺跡は、今から遡って3800~3500年の歴史があると推定されています。日本は縄文時代の竪穴式住宅の頃です。最古の「四合院」はそれより500~800年遅れて、早周遺跡で発見されました。現在の陝西省岐山凤雏村に位置しています。発見された時点、最古とされている「四合院」は、既に下記スケッチの様な二進四合院になっていました。

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    後に、現四川省の成都市で発見された、東漢時代(西暦25~220年)と思われるレンガアートに、四合院での生活が生き生きと映し出されていました。高いところから外部を観察できる監視塔も備わっていました。

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    あれ?これも四合院?囲いが多くない?と思いましたか。四合院には色々なパターンがあって、様式自体はとっても豊富とされています。「四合院」はその総称であると思ってください。

    1900年の敦煌文書流出と遺跡発見はあまりにも有名な話ですが、敦煌遺跡の下記壁画の一部に四合院の描写もありました。壁画の推測年代は魏晋(西暦220~589年)か、隋唐時期(西暦581~780年)です。

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    この時期から、四合院は大陸住宅の主流となり、様式も豊富になったと推測されます。明清時代(17世紀半ば)に至っては、四合院の建築技術が完全に成熟し、各地域に置いて、独自の特徴が鮮明に見られるようになります。中でも、北京にあるゆったり、整然とした「北京四合院」は最も有名で、標準的な四合院とされて来ました。

    身分等級に厳しい昔の中国では、四合院の各部屋の用途はほぼ決まっていました。「前堂後寝」が礼節であり、応接やホールは前(南)に置き、居室は後ろ(北)に置くべしとされ、「長幼有序、尊卑有別」と言う封建的思想が根付いていて、つまり、年功序列があり、身分にも上下の区別があると言う意味です。標準的な三進四合院を例に挙げた記事がありますので、ご参考下さい。


南北を軸に建築を縦に伸ばす「進」と横に並べる「跨」

    「四合院」は中庭を囲む建築スタイルの総称であると先ほど言いました。風水的に前門は南向きに建築されるので、南北を縦軸に構造を考えるのが普通です。南に向いて、北に位置するのが母屋、脇には東棟と西棟がある場合と、高い壁で囲む場合があります。

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    アイキャッチ画像に使っているのが、「四合院」から派生した最小単位、住宅棟があるのは二方向なので、一進二合院です。四方向に建物がある場合の一進四合院のイメージは上記画像の様になります。百姓や労働者などの住宅です。

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    次は二進四合院のイメージ画像です。二進四合院からは前庭があって、目隠し壁でセキュリティーが守れるようになります。前庭までは応接や客室など接待する場所です。平民の住宅です。

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    三進四合院になると、前庭の他にバックヤードを建設する事になります。バックヤードの奥にある北棟は最もセキュリティーが高く、一般的に世帯主の母親や娘など、家族の中の女性たちが住む場所となります。中上流階級の住居で最も多いスタイルです。

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     四進、五進四合院となれば、富豪、大富豪のお屋敷となります。

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    横に並べる作り方を「跨」と言います。イメージ画像は右に並べて作っていますが、左にも並べる事が出来ます。四合院の横に「跨院」があるのは、子だくさんの家族が多く、子孫が多くなると稼ぎ頭も増えて、建築費用が賄えます。

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    子孫が少なくてもお金に余裕がある家は「跨院」を庭園に仕立てて、趣味として楽しむ事も多いようです。

    このように、「四合院」は「進」と「跨」によって、バリエーションが豊かな建築スタイルとなって行きます。

「四合院」の地域性

    各地域で発展して来た四合院は、それぞれの地域特性に基づいて変化して来ました。下記した南方四合院、二合院、三合院がその象徴的な変化ですが、徹底的な違いは東北地方の四合院が閉鎖的なコミュニケーションスタイルであるのに対し、南はセミオープンなコミュニケーションスタイルを取り、高い壁すら取っ払う人もいます。これは各国に見られる、東北地域の人と南地域の人の性格差に由来するとも言われます。

    また、気象的な理由による違いには、屋根の勾配があります。東北地域の四合院は屋根の勾配が急なものが多いのに対し、南地域の四合院は屋根が緩やかな勾配になっていて、さらには屋上ベランダとして利用する為に、平屋根作りになっているものもあります。台風や季節風の特徴によって実用的に変化したものと察する事が出来ます。

    中庭の大きさの違いも各地方四合院特徴の一つです。東北地方は土地が広い上人口が少ないので、四合院の中庭は家庭菜園を余裕にできるほど広いが、南地方では、土地が限られている為、四合院中庭はとても狭いのです。

    日本の切妻屋根と同じスタイルの屋根には、中庭まで新鮮は空気を運んでくる役割があります。特に締め切った状態の四合院は、1階に溜まり気味の空気を、正門を開けずに自然と換気する事ができます。
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    南地域の南壁がない三合院の場合、このような風の流動を配慮しなくても風は流れますので、屋根のデザインも自由に変更が出来ます。しかし、東北の気候ではこのような三合院は厳しい気候に晒される事でしょう。四合院の中庭を生活区域として活用するには、囲まざるを得ません。

    更に視野を広げて、国際的に見ると、西洋スタイル建築と、日本も含めて東洋スタイル建築の様式が完全に対立しています。

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    日本の武家屋敷も多くは中国式の様に、囲んで建ちます。現代日本の住宅建築は西洋化されましたが、中国は依然「囲む」伝統を守っています。

    なんだかアメリカと中国が常に対立している理由を垣間見た気がします。性格的に、思考の脈絡もまるっきり対立しているからですね~西洋式は自分を中心とし、周りに植物で囲い、良くも悪くもオープンです。東洋式は自分たちの家族を中心とし、内側と外側の境界線がはっきりしています。

    この住宅のスタイルの違いから、こんな声が聞こえて来る気がします。

アメリカ:俺が国際警察だ、香港、台湾問題も、人権問題もこうすべきだ!
中国:ほっとけ、内政干渉だ、中国の国土だ、お前らに関係ない!

「四合院」からの派生

    南地方へ四合院文化が進むに連れ、少しずつ変化が生じて行きます。地域文化や人口の違いで、南地方の四合院は、四方向に独立した住宅棟を建てるのではなく、角が繋がった建物になって行きます。2~3階に限らず、更に高い建築へと発展し、現代のアパート、マンションに近い状態になります。それでも中庭文化は守られています。上から中庭を覘くと、「天井」と言う呼称が生まれ、南地方では、井戸に例えるほど中庭が小さいのです。

南方四合院


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    地価など都会の条件から、南地方の一進四合院は広く普及され、隣接条件によっては正門も位置を変えたりしなければなりません。この規模で北方の四合院豪邸が買えるほどの価値があります。東北の四合院は平屋が多いですが、南地域では土地の条件から、縦方向に面積を増やすしかありません。

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    現代に至って、生活スタイルが変化しても、四合院文化は根強く続いています。現代版四合院は中国の不動産業界で高値取引される物件です。

三合院

    都会では近隣住宅との密度が高い事から、南側の採光を確保する為に、南棟をなくし、「三合院」にアレンジしなければなりませんでした。

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    参考までに、上記は台湾で民宿に改造された三合院ですが、建築スタイルは古典的です。気候が穏やかである事から、屋根の勾配が緩やかになっていると推測します。

    そして、現代の都会では、四合院より遥かに実用的であると評価される三合院は、進化し続けていますので、最後に、日本でも良く見られる形状の現代住宅版二~三合院の画像を共有したいと思います。

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    中国最古の「四合院」について記事を書きました、よろしければこちらからどうぞ。


    本来の興味対象であるインテリア関係の記事も出来ましたので、四合院の中はどんな生活空間かをご覧になれます。