日本家屋の建築と内装に現代モダンスタイルを取り入れた和モダンは、既に日本の建築業に根付き、日本人に深く愛されて来ました。

    中国は現在住宅リフォームがブームなので、最近は良く眺めていますが、「新中式風格」と言う、古典的中華スタイルと現代モダンを上手く融合させた、チャイニーズモダンが、なかなか素敵だと思っています。

    家族に「どうして中国のインテリアを見てるのか」と笑われますが、単純に人口が10倍で計算すれば、駄作も傑作も10倍あるだろうし、変化もインスピレーションも10倍楽しめます、観察する事が面白いだけです。

    新型コロによるステイホームのおかげで、時間はたっぷりあります、これまでに興味を持っても生活に追われて見られなかったものを、たっぷり時間をかけて見るのも、有意義な過ごし方ではないでしょうか。


    中国は市場経済が始まって以来、色々な分野が凄まじい勢いで成長を遂げています。それは単に、周りがすでに進化しているからであって、一歩中国を出れば、素晴らしい技術見本がごろごろと転がっています、良く考えて見て下さい、古より完コピーの才能と器用さに長けている東洋人が、先進的な技術を吸収する事自体は造作もない事です。

    でも、面白いのはこれからだと思います。先進国に追いついてから、どうオリジナリティーを出せるか、その先に何がありましょうか。筆者が興味を持つインテリア分野でも、ガツンと衝撃を喰らうほどの何かに期待しますよね。

    今回、例にあげたこの住宅は床面積177㎡であり、日本の平均的住宅から考えると、かなり大きな家ですが、それが、広い部屋を視覚的に見せてくれるのは、別に面積を示す数字ではなく、中華スタイルの木枠(専門用語を知らないw)を使った装飾だと思っています。幅の違う線画のような木枠がメリハリのあるスペースマジックを見せています。


    古来の高級中華家具には細かく彫刻した細工があり、豪華で華やかな作りですが、ここの中華家具は、構造自体変わりませんが、一切の彫刻と細工を省き、直線の中華家具によって、チャイニーズモダンを演出しています。チャイニーズモダンとの特徴の一つは、格子構造にあり、テーブルやソファの足が濃い塗装の格子状と言うだけで、中華スタイルっぽく見えます。

    落ち着いた重厚な雰囲気の中に、塗装した木材家具がバランス良く、オリエンタルな優雅さを匂わせています。上の写真の更に上で見れますが、シャンデリアもかなりモダンを意識したシンプルなデザインです。ここでもしジャラジャラとしたシャンデリアなら、チャイニーズモダンスタイルとしては、品が落ちる気がします。


    ダイニングキッチンは、キッチンの見える部分が少々小さく感じる違和感、実は奥の左右両端は隠されていて、動線を確保しながらも、キッチンの汚れ易い部分を直接視線に入らない様配慮してあり、ここはぜひ将来のマイホームに取り入れたい部分です。


    キッチンのコンロ部分(上記写真の右奥に当たる部分)、ダイニングを通ってリビングへ移動しても、視線に入らず、清潔感を保ち易いので、料理する人には助かるデザインですね。キッチンもモダンを意識しているでしょうか、全面平板です。


    書斎もモダンな作りで、単調にならないで済むのは、中国で良く見かけるこの窓枠のおかげかもですね。




    照明が吊り下げタイプで、裸電球のようで裸電球ではないw 素朴なセンスだけどおしゃれです。


    中国の古典的建築は、殆どが宮殿文化から来たものです。細かい彫刻細工のある家具は破格の値段で、一般的には購入できません。このような現代風アレンジなら、古典的建築の味わいと品性を残しながら、一般人でも享受できるものとなります。

    もう一つ気に入っているチャイニーズモダンの内装例があります。ついでに載せて行きたいと思います。こっちの方はマンション最上階のペントハウス、より中華スタイルが濃厚です。



    戸建てかペントハウスでしか得られないこの吹き抜けは、限りなく贅沢な空間です。チャイニーズモダンの重要な要素である濃茶の塗装木材家具、本当にいい味を出していると思います。また、その濃茶のラインが天井にも、階段にも施され、ゴシックスタイルで良く見る強調されたラインのアクセントが、ちょっと濃い口のオリエンタル風味を引出していますよね。


    テーブルライナーにも中華模様が取り入れられ、中華スタイルとモダンスタイルも和モダン同様、相性がとてもいいように見えます。


    リビングの横に茶室と言うのは大人なおしゃれですよね、この茶具セットは中国茶道です。中国茶道は一時消滅しそうになっていました。文革時代はせっかくのお茶、全てストレートに茶葉を入れたままのがぶ飲みでした。茶道文化が蘇って、良かったです。リビングと茶室が最もチャイニーズモダンの良さが表れています。


    ダイニングとキッチンを仕切ると言う方法、中華料理の国ならではの発想ですが、すっごくいいアイディアではないですか。日本の家庭料理でも油を使うものが多く、そして、今の家庭で中華料理を作る事も日常的になって来ていますので、障子で仕切るのは、ありですよ、油煙や匂いを別室に流さない、汚れがたまれば障子紙を張り替える事でリニューアル完了です。我が家に取り入れたいアイディアです!



    暖色系に纏めた子供用ファミリースペースとベッドルーム。ファミリスペースのソファには曲線部分があって、柔らかい雰囲気づくりをしています。モダンスタイルは、必ず全てが直線とは限りません。


    こちらは施主の親御さんの部屋、カーテンがとてもおしゃれで、思わず写真を保存しました。モダンスタイルを単調にしない、直線的なおしゃれが、このレース繋ぎのカーテンから見えます。


    書斎兼客室ですが、日本のアパートってこの一部屋分ですよね。レイアウト自体は、欧米のモダンハウスで良く見るパターンです。


    主寝室です。とても落ち着いた大人テイストです。ここでもチャイニーズモダンの良さを見る事ができます。


    サニータリーはなんだか、懐かしい雰囲気です。どちらかと言うと、欧米スタイルですが、中国も租界時代に、上海あたりは欧米文化の影響が強く、このようなサニータリーが多かったと思います。なので、チャイニーズモダンとして認識されています。トップが大理石と言うのは衛生的で必須条件ですね。

    同じモダンでも、北欧モダンとチャイニーズモダンでは、テイストが違います。チャイニーズモダンの特徴と思われる部分を、上記2例から纏めてみます。

● 重厚な色の塗装で、格子図案を使ったクラシック木調家具、建具
● 壁や天井に施す中華スタイルの枠などのラインアート
● 照明など直線的デザインの付属設備
● 頭上空間も単調にならない、間接照明にも使える下がり天井
● テーブルライナーやカーテンなどに1つだけ中華図案を取り入れる

    いい勉強になりました。