中国の「デザインブック」と言う建築設計士集団らしきサイトに、最新案件としてアップされていた、中国の古典建築庭園を現代リフォームした、ラグジュアリーな別荘の写真を引用して、建築の深みを味わってみようと言うものです。設計事務所や著作権表示はそれぞれの写真の右下にあるので、省略させて頂きます。

    アイキャッチ画像だけでも、少しは「お~」と来ませんか、これが個人で所有している別荘と知れば、更に驚きませんか。さすが中国は広いと感心しましたか?どんな奴がどんな泥水を飲んで、ここまでのし上がって来たか、まぁそれは野暮なので、ここでは純粋に建築と言う素晴らしい文化のエッセンスを共有しましょう。

    ロケーションは中国の杭州、もともと中国の中でも知名度の高い観光名所であり、売りどころは風光明媚な自然です。現在は高級別荘地として開発され、このクラスの別荘が多く点在していますが、不動産バブルで買手が付かない状況が続いています。中でもこの持ち主がいる庭園は杭州のダムがある湖の側に位置し、杭州でも最も美しい景色を独占しています。

    紹介によりますと、庭園の敷地面積は462㎡で、住空間は延べ面積300㎡だそうですが、どう見ても、もっと広いじゃない?と言う感覚に囚われてしまいます。これは多分周辺に障害物が全くない、全面開放な視界が理由でしょう。先ずは典型的な中国の古代庭園の造形からイメージを掴んで行きましょう。



    反り上がった瓦屋根とその屋根を支える繊細な柱、これは中国古代の有名建築家「魯班」の伝説で良く聞いた建築法を連想させます。庭園の区画を仕切る壁にある丸い通行口、これも中国古典建築を代表したようなものであり、縁起を担いだデザインです。

    このような庭園は中国古代の名家が、一族揃って住み込むコロニーのようなもので、外界と隔離した静かさ、自然を取り込む美しさ、家族が程よく距離を保ちながら移動し、コミュニケーションする機能を併せ持っています。文化大革命で多くは壊されたので、地方でいままで残されたこのような庭園は文化財として非常に貴重です。

    建築で「借景」と言う言葉がありますが、もともとは中国の建築から来たもので、このような庭園は、どこから見ても視界の中自然を取り込んだ風景が、まるで絵画の背景かのように、鑑賞できる事を意識したデザインとなっています。そしてところどころに繊細な細工を施し、建築の魅力を散らかしています。


    庭園の回廊にはこのようなのぞき窓と言うか、開放部があり、庭園に向かって覘くと、まるで額縁に収まった庭園の絵画に見えませんか。それぞれの開放部で見られる異なる風景画、その風景に収まった人物がいた時に、ロマンスやストーリーが生まれる、そんな趣もまた古代庭園の魅力の一つです。


    そして、庭園の外壁にあるセキュリティの為の覗き窓も、ただ覘くだけの機能でなく、繊細な彫刻で庭園の美しさと品格を演出しています。昔の人も周りの環境に美意識を追求し、生活をより豊かなものにする知恵とセンスがありました。



    リフォーム後のリビングでしょうか、西洋のソファの横にはアジア高級家具の代表格である紅木家具の椅子があり、良く見て下さい、全く違和感がないですよね~しかも、このインテリアから、外観が実は中国古典庭園なんて連想できますか、内側と外側のギャップが、まるで別世界なのに、その場その場にいる時は、不自然さは感じられません。

    特に気づいた人がいると思いますが、現代中国の住宅の床や壁面には、大理石または人工大理石を多く使っています。本当に石が好きな民族です。中国は大陸で、雨嵐などの自然現象も多く、日本と同じ四季があり、家の汚れは砂塵や泥が多く、昔から掃除と言えば「擦地板」、つまり濡れモップでの床磨きです。

    大理石と木材を比較すると、水拭きのし易さも、水洗いへの耐久性も、大理石の方がずっと優位なのです。壁や天井はふんだんに木材を使っても、床は人工大理石やタイルの方が、合理的であると思うのですが、家を建てて貰う時は何故か木材の一択ですよね。

    我が古い家もリフォームを検討する時に、家族から多数決で木材床を押されました。温かみが違うと言うのです。家の温かみは床だけで決まるものではないのに、12年経って今はキャスター付き椅子の下は表面が剥げてボロボロ、張り替えるにも大金がかかるので、世帯主は渋っています。特に床は家族全員が毎日踏みつけて、子供達が走ったり跳ねたり、木材の床では耐久性が足りないのに、固定概念から新しき良きものを素早く吸収する点では、中国人にはかないません。




     上の写真、日本の家なら、リビングの中でも広くて豪華なものと思われますが、リビングではないです。下の写真と併せて、主寝室です。向かって右側は、寝起きついでの寛ぎスペースであり、左側は下の写真のマスターベッドです。


    こちら、主寝室の入り口で、寝酒の為の小さなカウンターもマニュアル通りに設置してあります。



    子供部屋や客室のベッドです。庭園の中にある楼閣が居住部なので、セキュリティの安心感から、思い切り開放的な部屋ばかりです。


    サニータリーは西洋寄りで、浴槽、洗面、トイレが同じ室内にあり、ただ使い方でドライエリアとウェットエリアに分かれています。


    日本式の書斎で、ここにある小物はわざわざ京都から取り寄せたそうです。



    茶室です。中国茶道をご存知なら、茶器を見てわかりますよね。


    こちらはダイニングです。この解放感と優雅さ、もう何を作っても美味しいと食べられそうですよね。ここの景色だけでも最高なご馳走ではないですか。



    応接セットと会議室ですよね、多分。我が家のサラリーマンは仕事を家に持ち込みたくないとか言っていましたが、かっこいいとでも思っているのでしょうか。中国で多くの人は、仕事が生活の一部であると認識していて、志の高い人ほど、生活と仕事のスペースを持ち合わせ、上手く切り替えています。雇用者と被雇用者は、意識そのものから違いますよね。



    おまけのパノラマを2枚、楽しんでください。上にある普通サイズの写真とはまた、一味が違います。

    いかがですか、中国もまた高度成長期を経て、現在貧富の差が大きく開いています。このラグジュアリーな別荘は富を象徴した例ですが、日本やアメリカ同様、大きく開き過ぎた貧富の差は無気力な若者を生むか、バイオレンスか、社会が両極端に走り出すものです。写真だけで建築と文化を堪能する自分は、かなり平和主義者だと思ってしまいました。

    ご馳走様です。